急増するカンボジアの家計所得 |
「プノンペンは先進国の小売企業が進出を検討するにはまだ消費市場としての規模が小さいのではないか」というイメージを勝手に抱いていたのですが、興味深かったのはイオンによる市場調査の結果です。
カンボジア(2009年)では月800ドル以上の家計所得を得ている世帯の割合は全国でたったの3%ですが、今回のイオンの進出予定地の1㎞以内の商圏では75%。2,000ドル以上の世帯も14%にのぼるとのこと。月400ドル以上の所得世帯の割合も全国では11%ですが、5㎞以内の商圏になると78%に高まるそうです。プノンペンの年間小売市場規模としては2500億円程度が見込まれるとのこと。
在留外国人も含まれているのかもしれませんが、ここまで所得水準が高いというのは意外でした。先日、「貧困削減が進むカンボジア」というエントリで個人レベルの消費額をベースにした貧困率の動向について書きましたが、「世帯あたりの家計所得」で見た場合、プノンペンはともかくカンボジアの国全体としてはどういう状況になっているのでしょうか。
もっと正確で便利な統計は他に出ているのかもしれませんが、以前ご紹介した米国共和党研究所(IRI)のカンボジアの世論調査にも回答者の家計所得について興味深いデータが掲載されていました。参考までにご紹介しておきます。
まず、こちらは今から5年前の2008年時点の家計所得(名目)の分布です。月50ドル以下の所得の世帯の割合が全体の約50%。月100ドル以下(赤色で表示)となると約80%を占める形になっています。
次は3年前の2010年時点のデータです。月100ドル以下の所得の世帯の割合は全体の約50%まで落ち、一方で月500ドル超の世帯(青色で表示)が7%となっています。
そして2013年現在。月100ドル以下の所得の世帯は全体の30%未満まで下がっています。最も割合が高いのは月101-250ドルの世帯(36%)ですが、他方で月500ドル超の世帯が17%にまでアップしています。
このデータが実態をどの程度まで反映しているかはわかりません。「インフレ率を加味した実質所得はどうなのか」という指摘も当然あるとは思いますが、カンボジア人の家計所得の現在の水準と最近の変化について、大雑把なイメージをつかむのには役立つように思います。5年間というわずかな期間でこれだけの変貌を遂げているのは驚きです。
援助に携わる者としては取り残されている低所得層の人たちに注意を向け続けていくことが重要だと感じますが、他方でこの変化のスピードを見れば、イオンのような企業や投資家が、カンボジアの中間層や富裕層人口の増加、消費市場としての成長可能性に高い期待を寄せるのも納得できる気がします。これから3年先、5年先、さらにどのような変化を経験することになるのか、非常に興味深いところです。