アンコールワット・マラソンに参加しよう |
実際に自分自身で体験してみて、確かにこれは多くの人に参加をおすすめしたい大会だと思いました。何よりも魅力的なのは言うまでもなくそのコースです。世界遺産アンコールワットの真正面からスタートし、数多くのアンコール遺跡群とそれを取り囲む森のなかを走りぬけるという、非常に贅沢で味わい深いレースなのです。
遺跡の敷地内はほぼフラットな地形ですし、私自身、荘厳な雰囲気のなか、心が洗われるような感覚で心地よく走ることができました。「マラソンなんて体力的にとてもとても・・」という人でも、遺跡建築を眺めながらのんびり自分のペースで走るという楽しみ方が可能だと思います。
大会の開催趣旨も意義深いです。そもそもこの大会は地雷被害者を支援する日本国内の募金活動をきっかけに発案されたもので、「世界に向けて対人地雷の使用禁止を訴える」ことがテーマになっています。
参加者が支払うエントリー料も、地雷被害者への義手・義足の寄贈、被害者の社会復帰や自立、青少年のHIV/エイズ予防などの支援活動に充てられているそうです。レース自体、地雷被害者や身体障害者のランナーも一緒に参加する形になっています。私自身はこれまで直には健常者のレースしか見たことがなかったので、車椅子や足の不自由な方が負けじと一生懸命汗を流してゴールを目指している姿がとても印象に残りました。
この大会の運営委員会を支援しているのは、元五輪メダリストの有森裕子さんが設立した日本のNPOの『ハート・オブ・ゴールド(Hearts of Gold)』です。完全にカンボジア側の関係者の手だけで大会の運営管理が可能となるよう、人材育成や組織強化、広報・財源拡大などに協力してきているそうです。
今回も有森さんがレース開始前の会場で挨拶され、他の参加者とともに競技に参加する姿を目にすることができました。15年近くにわたって地道に粘り強い支援を続け、大会の発展を支えられてきた彼女と関係者の方々の努力には頭の下がる思いがします。
シェムリアップの町は規模としては小さいですが、このマラソンが近づくと通常の観光客に加えて、数千人のランナーや応援の人々が一挙に押し寄せることになります。今回は大会前夜にオールドマーケットやパブストリート周辺に繰り出してみましたが、通りのレストランやカフェは満席で、かなりにぎわっていました。
今後、大会の国際的な知名度がもっとあがり、参加人数がさらに増えれば、観光業の一層の振興にもつながることだろうと思います。現地にお金を落とし、経済の発展に貢献するという意味でも、やはりできるだけ多くの人に参加をおすすめしたいところです。
一方、シェムリアップでは2014年からこの「アンコールワット国際ハーフマラソン」に加え、新たに『アンコールエンパイア・フル&ハーフマラソン(Angkor Empire Full & Half Marathon)』という名称のレースも開催されるそうです。
今までの大会のコースはハーフマラソン(21㎞)、ロードレース(10㎞)、ファミリー・ラン(3㎞)の3種類だけだったのですが、新たにフルマラソンが加わるとのこと。走行ルートは遺跡を飛び出してシェムリアップの中心街まで伸びる形になるようです。
また、これまでのハーフマラソンはカンボジアでもっとも涼しく過ごしやすい乾季の12月に開催されてきたのですが、新しいフルマラソンの開催は8月17日になるそうです。ひょっとしたら日本をはじめとする先進国からの参加者をもっと呼び込むために夏季の休暇シーズンに設定したのかもしれません。だとすればそのねらいには納得できますが、早朝の時間帯だとはいえ、雨季のまだ蒸し暑い時期に重なってしまうのは少しつらいかもしれません。
ハート・オブ・ゴールドの昨年の活動報告を見ると、大会の運営管理上の第一の課題として「安全」の確保があげられていました。今回もスタート前とゴール後の会場では各競技のランナーが入り乱れてかなり混雑していましたし、この先、規模が大きくなれば混雑も増幅して事故のもとにもなりかねません。会場の導線の整備については改善が必要である気がします。
他にも、10kmと21kmの完走者には記念のメダルが与えられるとの話だったはずが、なぜだか途中で在庫が切れて受け取れない人がいたり、ギャラリーがコースを歩いていてランナーの邪魔になっていたりといった場面も見られました。まだ万全の運営体制というには遠い感じですが、これもむしろ「カンボジアの大会ならではの光景」として楽しむ余裕を持ちたいところですし、今後の進化を見守るのもまた楽しみの1つになりそうです。
記念すべき「第1回」のフルマラソン大会への参加申込みはこちらのサイト(英語)で既に受付が開始されているようですが、英語での手続に不安がある方は日本の旅行会社が毎年企画するマラソンツアーを通じて参加する方法もあると思います。
8月のフルマラソンと12月のハーフマラソン、それぞれにご関心の方はぜひ前向きにご検討ください。
(追記)当初、『2014年から従来の「国際ハーフマラソン」は終了し、新たに「フルマラソン」レースに衣替えされるらしい』との情報を記載していましたが、誤報でした。訂正してお詫びします。