カンボジア高校卒業試験改革の波紋(1) |
大きな痛みを伴ったともいえる教育省の改革ですが、短期的にはまだまだ色々なところで予期せぬ展開や影響も出てきそうな気がします。
準学士課程という「抜け道」
今年の卒業試験で不合格となった約60%(約5.5万人)の学生たちの今後の進路について、教育相は「留年して基礎学力を身につけ、来年の卒業試験に再挑戦することが彼らにとってベストの選択肢だ」と述べています。
大学進学には高卒資格が必須なので、進学希望の学生は言われずともほとんどが留年するのだろうと思っていましたが、今月に入り留年選択者は不合格者の1割程度にとどまるとの予測も報道されています。
代わりの進路として人気の高まりが予想されているのが、私立大学が設けている準学士課程(Associate Degree)への進学。これは学士課程(Bachelor's Degree)への進学希望者のための2年間の準備コースのようなもので、高卒資格がなくても入学でき、必要単位を揃えて卒業すれば、その後の大学(学士課程)への進学が認められるのだそうです。
自信を失った多くの学生が「来年の高校卒業試験に再挑戦してもカンニング無しでは受かる保証が無いし、留年や落第を続けるのも恥ずかしい。ならば準学士に進学して2年後の大学進学を目指す方が無難だ」と考える可能性は大いにありそうです。
しかしこの傾向が強まると、せっかくの教育省の改革努力に水を差すことになるかもしれません。別ルートで大学に進学できる『抜け道』があれば、皆が易きに流れ、「必死に勉強して厳しい試験に合格しよう」という意欲を削がれかねないからです。
学力不足の学生をこうした特設コースに安易に受け入れる私立大学側の姿勢に対しても、「学生を数多く集めて利益をあげるビジネスばかりに執着し、教育や学生の質の向上を重視していない」「準学士など廃止すべきだ」という批判が出ているようです。
「抜け道」を選ぶ学生の人数が無視できない規模に広がるようだと、教育省も傍観するだけではいられなくなるかもしれません。
(つづく)