カンボジア経済を牛耳る10人の大物実業家たち(3) |
9.Lim Chhiv Ho (リム・チ・ホー)―『The Gatekeeper(ゲートキーパー)』
中国系カンボジア人。コングロマリット企業LCHインベストメントグループの会長。カンボジア商工会とプノンペン商工会の副会長を務める。カンボジア赤十字社の理事であり、出資者でもある。世界にネットワークを持つ華人同族組織Lim Association(西氏宗親会)のカンボジア支部名誉会長。
クメール・ルージュ政権下での家族の死、強制労働キャンプでの凄惨な体験を乗り越えた後、シアヌークビルの麺売りから身を起こし、大富豪にまでのぼり詰めた半生はドラマチックなサクセス・ストーリーとして公に語られている。
味の素やミネベアなどの日系企業が多数進出するプノンペン経済特区(PPSEZ)のオーナー(株式の約8割を保有。※ゼファーとの合弁)として知られるほか、シアヌークビル近郊にも経済特区を有する。
LCHインベストメントグループの代表的な事業はアトウッドビジネスセンター、カサ・アンコール・ブティックホテル、Ideal Garden Homes (高級住宅)など。ヘネシーコニャック(ブランデー)、ジョニーウォーカー(ウィスキー)、ハイネケン(ビール)、フィリップス(家電)の販売代理業も担う。
政財界の大物との関係も強く、パワーカップルのイアイ・プーとラオ・メンキン夫妻とは縁戚関係にある(子供同士が結婚)。
10. Pung Kheav Se(プン・キエウサエ)―『Banking Pioneer(銀行界のパイオニア)』
中国系カンボジア人。国内2位のカナディア銀行の現会長であり、不動産開発大手OCICのCEO。銀行家としては国内でもっとも著名な人物であり、現在ASEAN銀行協会会長、カンボジア銀行協会会長も務める。カンボジア建設業協会の会長、フン・セン首相のアドバイザーでもある。
クメール・ルージュ政権時代、難を逃れてカナダのモントリオールに移住し、金取引で財を成した後に帰国。カナディア銀行の創設後、事業を多角化させた。プノンペンの不動産開発ブームを象徴する新興商業地区「ダイヤモンド・アイランド」のオーナーであり、コンドミニアムやショッピングセンターを含む複合施設「オリンピア・シティ」の開発プロジェクトも同時に進行させている。
その他の代表的な事業は、プノンペンのソリヤ・モール(ショッピングセンター)、ラッキースーパーなどが出店するRatana PlazaやSovanna Shopping Center、シェムリアップのカンボジア文化村(テーマパーク)、シアヌークビルのインデペンデンスホテル(高級ホテル)、カナディア工業団地など。今年開業予定の東横イン・プノンペン建設も合弁で手掛けている。
近年はカナディア銀行の事業施設が社会を震撼させた2つの大きな事件の舞台となっている。
・『水祭り将棋倒し事故(2010年)』:プノンペンで行われた水祭りで、ダイヤモンド・アイランドと本土を結ぶ橋に殺到した見物客が将棋倒し。死者375名、負傷者755名を出す大惨事となる。事故原因の究明を巡り、人権団体や野党から現場の橋を建設し所有するOCIC社の責任を問う声も出たが、同社は否定。ただし被害者への見舞金は支払ったとされる。
・『労働者デモ「血の弾圧」事件(2014年)』:賃上げを求める工場労働者たちのデモ隊と治安部隊がプノンペン郊外のベン・スレン地区で衝突。治安部隊による発砲で、死者4名と多数の負傷者が出た。当事者となったのはカナディア工業団地に入居する縫製工場の労働者たちであり、事件後も同団地では労使紛争が続いている。
(参考エントリ)『カンボジアの政情が緊迫-弾圧された縫製工場労働者デモ』(2014/1/6)