カンボジアの在留邦人にも読者は多いと思いますが、毎回楽しみに読んでいる連載記事(JBpress)があるので、ご紹介しておきます。
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『カンボジアでロボコン!?』(全21回)
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『それでもTVは放送される』(現在連載中)
2つの記事の筆者はカンボジアの国営TV局でTV番組の制作指導を行うために国際協力機構(JICA)からボランティアとして派遣されている方です。
『カンボジアでロボコン!?』の連載には、TV局主催でカンボジア初の大学対抗ロボットコンテスト(ロボコン)を実現するまでの一喜一憂、ドタバタの日々がユーモアたっぷりにつづられていて、とても面白いです。
青年海外協力隊など、途上国での国際協力の仕事に関心がある方にもおすすめかもしれません。カンボジアに限らず、どこの途上国に行っても大抵の人は筆者と同じようなカルチャーショックを日々味わいながら活動することになると思うので、どういうものなのか疑似体験的に読んでおくのもよい気がします。
(出所)Cambodia Robocon Webisite
ロボコンの開催が迫るなかにあっても準備を計画的に進められないカンボジアの人たちの様子に筆者は何度も愚痴をこぼされていますが、
『それでもTVは放送される』の
最新記事にその理由に関する考えが述べられていました。
「カンボジア人の特性(弱点?)」として3点指摘されているのですが、私自身の身近な経験に照らして「そうだよなぁ」と共感を覚えた部分もあるので、勝手ながら過去記事のなかで印象的だったフレーズの引用とあわせてメモしておきます。
「引用だけ読んでも話の文脈もわからないし、ピンとこない」という方は是非、元記事をご一読ください。
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1.縦割り社会で横の結びつきが希薄なので、縦割りの中以外で情報を拾い上げることができにくく、その情報を活用する術を知らない。
“「あなたはカンボジアのことがよく分からないからそう言うけれど、私がそういう人に声をかけるわけにはいかないのですよ。‥カンボジアというのはそういう社会なの。それにその会議にも私は出るわけにはいかないの。カンボジアってそういうとこなの。」
「カンボジアってそういうところだ」って言われるとねえ、私も何も反論できないのだ。”
(「『カンボジアってそういうところ』は迷路の入り口」より)
2.歴史的に伝承が遮断されていて、成功体験が少ないため、経験したことがないことや、将来に対する予測、予想を立てるのが苦手である。
“彼らと接してきて思うのは、カンボジアの人には、「経験」や「実践」が伴った「成功体験」の実感が欠けている、ということだ。
それは、この国の悲劇的な歴史と関係があるのかもしれないし、圧倒的な貧困から来ているのかもしれないし、その両方かもしれない。それは個人もそうなのだが、もっと言えば社会全体としての「成功体験の実感」を積み上げてきていないし、伝承されているものもほとんどない。
この、積み上げや伝承がないというのはどういうことかというと、個人も社会全体としても、将来に対する予測や想像ができにくい、ということだと私は思う。つまり、経験がないのだから想像ができない。伝承が分断されているから予測がたちにくい、ということであるような気がするのだ。
だから、千の言葉を並べて、「ロボコンは面白いし、カンボジアの将来にも役に立ちそうですよ」と説明したところで、それに似た類の成功体験や伝承がほとんどないんだから、実感しろ、と言う方が無理なのだ。”
(「どうすれば成功体験のないカンボジア人を動かせる?」より)
3.文字化による情報共有ができない。文字化しないということは、長期的なスケジュール管理、準備ができない。
“大会4日前にして初めての会議。しかも、副局長である通称“松平の殿様”とアシスタントのボラシー以外、ロボコンとは何なのか、ほとんど誰も知らないのである。
その会議までに、殿様は私がこれまで準備してきた進行台本やルール、参加大学の詳細をクメール語に翻訳し、(殿様にとっては最も)大事な式典の式次第などすべてを整え皆に説明した。
しかし、こうした大人数のスタッフや参加者が動くときに徹底されなければならない、当日の全体スケジュールを殿様は発表しない。なぜか、開会式のスケジュールと閉会式のスケジュールだけが書かれていて、その間に「コンテスト」と書かれているだけだ。”
“‥目安を書いても意味がない、と殿様は言いたいらしいのだ。
時間に関してカンボジア人はあまり頓着しない。例えば要人が出席する式典では、要人が何時間(何分ではない)もスピーチしていたりする。だから何時に終わるのか誰も分からない。でも、カンボジア人はそれでも何とかしてきたのだから、何とかなる、と殿様は考えているらしいのである。”
(「カンボジア流時間管理との溝をどう埋める?」より)
話が全くそれてしまいますが、この連載のなかでは「富士山よりプライドが高い大学」「カンボジアの東工大」と筆者が呼ぶプノンペン工科大学の話が何度か出てきます。
最近の私のブログはカンボジアの高等教育と人材の質に関するネガティブな話題ばかりになってしまっていますが、例えば
こちらの記事などを読むと、全く違うポジティブな印象も生まれるかもしれません。
JICAはプノンペン工科大学に対しても技術協力を実施している最中のようです。具体的な内容は承知していませんが、国の将来を担う優秀な理工系人材を増やすためにも意義深い協力ではないかと思うので、頑張って成果を出して欲しいですね。